グランドセイコーのスプリングドライブ9Rムーブメントの時計技術（パート7）

驚くべき美しさ - グランドセイコー スプリングドライブ SBGA211 スノーフレーク, 画像出典: timezone.com

有名なスプリングドライブに関しては、そのすべてがユニークです。ご存知の通り、簡単に言うと、この時計技術は機械式とクォーツのメカニズムを組み合わせており、機械式時計のようにエネルギーを生成しながらも、その精度はそれをはるかに超えています。スプリングドライブは、20年以上の研究の成果であるだけでなく、機械式と電子式の時計製造の両方のマスタリーの結果でもあります。グランドセイコーの場合、時計製造は真に芸術の境界に達しています。 

グランドセイコー スプリングドライブ 9R 時計技術をよりよく理解するために、まずその誕生の歴史を振り返りましょう。スプリングドライブの概念は1977年に、セイコーのエンジニア赤羽義和の頭から生まれました。彼は22年と600以上のプロトタイプを経て、1999年にスプリングドライブを発表しました。セイコースプリングドライブのムーブメントは、グランドセイコー以外のセイコーブランドでも使用されており、プロスペックスやクレドールシリーズも含まれます。しかし、グランドセイコーの下で発表されたムーブメントは、このブランド専用です。これらのムーブメントは、スプリングドライブ 9Rファミリーと呼ばれています。 

トライシンクロレギュレーター用の回路基板, 画像出典: thenakedwatchmaker.com

スプリングドライブは機械式ですか？

さて、技術的な側面に移りましょう。多くの人がスプリングドライブが機械式ムーブメントかどうか疑問に思っています。その質問に答えるために、まずその構成を見てみましょう。基本的に、スプリングドライブは機械式時計のほとんどのメカニズムを持っていますが、エスケープメントとバランスホイールの代わりにトライシンクロレギュレーターシステムを使用しています。トライシンクロレギュレーターは、メインスプリングから電力を生成し、クォーツ技術と電磁力の助けを借りて時計の針への供給を制御します - グライドホイールと針の速度を電磁ブレーキで制御します。

トライシンクロレギュレーターは、動く部品を調整し、同期を確立するために3種類のエネルギーを使用します：

したがって、スプリングドライブはハイブリッドムーブメントの一形態、または機械式と電子式のムーブメントの間の架け橋と言えますが、その場合、それは未来的な架け橋であり、速度制限が平均をはるかに超える超高速のハイウェイです。実際、スプリングドライブに関連して「ハイブリッド」という用語を聞くことはあまりありません。なぜなら、実際には、精度に関して新たな基準を打ち立てた全く新しい技術だからです。したがって、「時計製造の進化」というフレーズがスプリングドライブに関して適切な分類となるでしょう。 

スプリングドライブがついに日の目を見たとき、新世紀の瀬戸際で、伝統的な機械式ムーブメントのファンは当然のことながら疑念を抱き、その特性、品質、耐久性について質問しました。「クォーツ部分」はほぼ常に疑問視されました。なぜなら、通常、クォーツ時計（グランドセイコークォーツシリーズを含む）はバッテリー電源を使用するからです。しかし、バッテリーで動く電子時計とは異なり、スプリングドライブは他の機械式時計と同じようにメインスプリング（または2つ）によって駆動されます。言い換えれば、スプリングドライブは自ら電力を生成し、バッテリーや他の電源を必要としません。結論として、スプリングドライブを内蔵した時計は、適切にメンテナンスすれば数十年持ちます。

セイコー SNR033 GMT, キャリバー 5R66

グランドセイコー SBGE201 GMT, キャリバー 9R66

スプリングドライブは多くのセイコーブランドの時計の心臓部を成しており、これまでに多くの新しいスプリングドライブムーブメントが導入されています。これらは通常、番号、文字「R」、およびバージョンコードでマークされています。たとえば、グランドセイコーブランドに予約されている9Rシリーズでは、30ジュエルのキャリバー9R65、39ジュエルの9R02、50ジュエルの日付およびGMTの9R86などがあります。キャリバー番号はその年代順の導入を表すものではなく、バージョンは他のブランドの下で同等のものを持っていることが多いことを覚えておくことが重要です（たとえば、セイコープロスペックスキャリバー5R66とグランドセイコーの9R66）。 

グランドセイコー スプリングドライブ 9Rファミリー

初期のスプリングドライブキャリバーは、主にクレドール（7Rファミリー）およびセイコー（5Rファミリー）ブランドの限定版時計のケースに充填されていました。最初のスプリングドライブムーブメントはグランドセイコーに受け入れられませんでした。グランドセイコーは1998年に設定された新しいGS基準に対して、はるかに高い要求をしました。最初のスプリングドライブムーブメントは、その要件を満たすためのパワーリザーブが不足しており、さらにそのレベルに進化する必要がありました。したがって、最初のグランドセイコースプリングドライブムーブメントは5年後の2004年に誕生し、キャリバー9R65と呼ばれました。9R65ムーブメントの導入以来、9Rファミリーのムーブメントはグランドセイコーの時計専用に予約されています。

キャリバー9R65 - グランドセイコー青いスノーフレーク SBGA407 - スカイフレーク, 画像出典: watchesbysjx.com

グランドセイコースノーフレーク - キャリバー9R65

9R65は、パワーディスプレイと手動巻きオプションを備えた自動キャリバーでした。日差±1秒、30ジュエル、3日間（72時間）のパワーリザーブを持っていました。このムーブメントは主にヘリテージコレクションの時計に搭載されており、グランドセイコースノーフレークの最初のバージョン、すなわちグランドセイコーSBGA011およびそのすべてのバージョンに見られます。時計のダイヤルは新たに降り積もった雪を表し、「スノーフレークパターン」と呼ばれています。これは、スプリングドライブが誕生した日本の信州地方の冬の朝にインスパイアされています。その他のモデル、主にスノーフレークの再発行およびバージョンには、SBGA001、SBGA003、SBGA083、SBGA085、10周年モデルSBGA111、SBGA109、SBGA203、次にSBGA211（別のスノーフレークの再発行）、SBGA259、SBGA283、SBGA293、次にSBGA407 - 2019年のグランドセイコー青いスノーフレークで、ダイヤルに青みがかったスノーフレークパターンがあり、「スカイフレーク」と呼ばれています。

スノーフレークやそれにインスパイアされた他のモデルに加えて、スプリングドライブコレクション、特に9R65ムーブメントは、グランドセイコーダイバーズウォッチを初めて実現しました。愛されるSBGA029はステンレススチールケース、チタンバージョンSBGA031が特徴です。

スプリングドライブ GMT - キャリバー 9R66, 9R86

2005年には、キャリバー9R66が導入されました。これは基本的にGMT機能が追加された9R65でした。このムーブメントで動く時計は、グランドセイコーのスポーツコレクションから人気のGMTモデルです：SBGE001、SBGE005、SBGE011、SBGE205、SBGE211。

2008年には、グランドセイコーの下で初のスプリングドライブクロノグラフが登場し、自動キャリバー9R86が搭載され、50ジュエル、GMT機能、もちろん72時間のパワーリザーブを備えています。発表されたモデルは、グランドセイコーSBGC001、SBGC003（黒いダイヤル）およびSBGC005（ゴールドチタンバージョン）でした。9R86は、グランドセイコースポーツコレクションの他の時計にも搭載されており、グランドセイコーSBGC201、SBGC203、SBGC205、SBGC221、SBGC223などのモデルがあります。

グランドセイコースプリングドライブの驚くべき精度

更新された9R65、キャリバー9R15は、グランドセイコー9R10周年スプリングドライブ限定版SBGA109で導入されました。新しい9R15は、日差±0.5秒の精度を持ち、20周年限定バージョンとして、グランドセイコースポーツスプリングドライブ20周年SBGA403限定版500個や、グランドセイコーゴジラ65周年SBGA405、さらに1964年の57GSまたはGSセルフデイターの50周年を祝うグランドセイコー「セルフデイター」スプリングドライブ限定版（2番目のグランドセイコーモデル）として、SBGA103、SBGA105、SBGA107としてマークされています。

非常に高級なグランドセイコースプリングドライブ SBGD201、キャリバー9R01、画像出典: hodinkee.com

2016年のバーゼルワールドでは、192時間（8日間）のパワーリザーブを持つ手動巻きの自動ムーブメント9R01が導入されました。56ジュエルを持つこのムーブメントは、グランドセイコーヘリテージコレクションの素晴らしい時計、プラチナケースのグランドセイコーSBGD201、18KローズゴールドケースのグランドセイコーSBGD202、またはダイヤモンドとサファイアをあしらったスノーフレークのようなジュエリーモデルで、限定10個のグランドセイコーSBGD205を駆動します。

当時、39ジュエル、手動巻き、84時間のパワーリザーブ、日差±1秒のキャリバー9R02も導入されました。これは、グランドセイコーエレガンスコレクションに見られ、スノーフレークダイヤルパターンを持つモデル、グランドセイコーSBGZ003や、超レアなグランドセイコーSBGZ001（30個のみ生産）に搭載されています。

新しいスプリングドライブキャリバー9RA5、「オフセットマジックレバー」は、同じ高い巻き上げ効率でムーブメントの深さを減少させることを可能にします, 画像出典: grand-seiko.com

グランドセイコー60周年記念限定版プロフェッショナルダイバーズ600M（SLGA001、700個のみ製造）は、最近新たな驚きをもたらしました：9RA5ムーブメントは、グランドセイコースプリングドライブファミリーの新世代を代表しています。内部に38ジュエルを持つ9RA5は、日差±0.5秒の卓越した精度と、これまでで最もスリムなスプリングドライブバージョンで120時間（5日間）のパワーリザーブを提供します。これは、グランドセイコースプリングドライブファミリーがその道の終わりに近づいていないことを意味します。彼らは世界で最高の時計を作るための終わりのない使命を続けています。そして振り返ると、最初から高い基準が設定されており、グランドセイコースプリングドライブの精度は、時計製造が知っていたすべての限界を超えました。

スプリングドライブムーブメントの精度は、導入以来2016年まで、通常は日差1秒未満（1ヶ月±15秒）に設定されており、これは他の有名ブランドの中でも最も有名な時計の2倍の精度でした。9R01の導入以来、スプリングドライブの精度は驚異的な±0.5秒/日（±10秒/月）に急上昇し、これは50％の改善であり、現在のグランドセイコーのハイエンドとして位置付けられています。これは、グランドセイコースプリングドライブが依然としてゲームの最前線にいることを意味します。新しいスプリングドライブムーブメントは卓越した精度を提供するように作られており、印象を与えますが、古いスプリングドライブムーブメントを選んでもあまり「時間」を失うことはありません。多くのグランドセイコースプリングドライブの所有者は、実際には違いに気づかないと言っています。しかし、グランドセイコーを知っているなら、彼らはそこで止まることはないでしょう。あなたはそれに賭けることができます。

最高のグランドセイコースプリングドライブ時計

推奨に関しては、1つを選ぶのは非常に難しいです。グランドセイコーの名の下にある各時計は、献身、デザイン、エンジニアリング、時計製造の芸術、そして他の多くのブランドに対する全体的な優位性を持って作られているため、特にスプリングドライブを内蔵した時計を選ぶ際には、どれを選んでも間違いはありません。スノーフレークは最も有名かもしれませんが、見ての通り、信州の雪の美しさを称える他のモデルもたくさんあり、どれも非常に魅力的です。私たちにとっては、グランドセイコースプリングドライブコレクションから1つの時計を選ぶことが、時計コレクターにとって最も難しい選択かもしれません。

グランドセイコーの価格に関しては、確かなことがあります：グランドセイコーは長持ちするように作られているため、古いモデルでも年齢とともに価値を失うことはほとんどありません。特に限定版に関しては、いくつかはさらに価値が上がることもあり、この高級ブランドのすでに高い価格に拍車をかけています。しかし、もし何かがその価値に見合うものであれば、それはグランドセイコースプリングドライブ技術です。

執筆者 M.H. 、画像は他の著者によるもの 

参考文献：

• grand-seiko.com